外来で「視力差・色覚差はあるのに眼底が地味」という場面に出会ったとき、RAPD(Relative Afferent Pupillary Defect:相対的求心性瞳孔異常)を確認できると、求心路障害の可能性を整理しやすくなります。この短尺所見動画は、swinging flashlight test の“決定的な一瞬”だけを切り出してくれる教材です。
この記事では、「光を当てた瞬間にむしろ散瞳して見える側=RAPD側」という読み方を、散瞳前の外来手順に落とし込んで整理します。
この動画について
- 動画タイトル: Relative Afferent Pupillary Defect
- チャンネル名: U-M Kellogg Eye Center(The Eyes Have It)
- URL: https://www.youtube.com/watch?v=WrNYqNH3b3A
- 動画長: 約34秒(短尺)
- この動画を取り上げる理由: 「光を当てた瞬間にむしろ散瞳して見える側=RAPD側」という読み方を、数十秒で確認できるからです(スクショや動画転載は行わず、所見の要点のみを自分の言葉で再構成します)。

図1: swinging flashlight testで、正常、右RAPD、片眼の遠心路障害があるときのReverse RAPDを分けて示した模式図です。実際の瞳孔の見え方は照明条件、瞳孔径、固視状態により変わり、この図だけで診断を決めるものではありません。
動画の内容を日本語で解説
「光を当てたのに散瞳して見える」側が RAPD [ts]0:04-0:12[/ts]
swinging flashlight test では、ペンライトを左右の眼に交互に当てて、両眼の縮瞳の“保ち”を見ます。正常であれば、左右どちらに光を当てても縮瞳は同程度に維持されます。
この動画では、光を左眼から右眼へ素早く移した直後に、両眼の瞳孔が「さらに縮む」のではなく「むしろ開く」ように見えます。これは右眼から入る光刺激の求心性入力が相対的に弱く、瞳孔括約筋に向かう反射入力が落ちるため、と解釈します。
RAPD は「片眼の瞳孔だけが悪い」という所見ではありません。片眼に光を入れたときの入力が相対的に弱いため、両眼の瞳孔が同時に開いて見える、という左右差の検査です。
何を局在している所見か:求心路(視神経/重度網膜) [ts]0:12-0:20[/ts]
RAPD は左右の求心路入力の“差”を見ている所見です。示唆されるのは主に以下です。
- 視神経障害(視神経炎、虚血性視神経症、圧迫など)
- 片側優位の重度網膜障害(例: CRAO、虚血性CRVO、広範な網膜剥離、広範な網膜虚血など)
一方で、動眼神経麻痺などの遠心路障害(縮瞳できない側)そのものを直接示す所見ではありません。瞳孔所見は「求心路の左右差」と「遠心路の不全」を混同しやすいため、まずこの切り分けを意識します。
陰性でも“両側病変を否定できない” [ts]0:24-0:34[/ts]
RAPD は相対評価なので、両眼が同程度に障害されていると陰性になりえます。つまり「RAPDがない=視神経が正常」とは言えません。左右差が乏しい両側病変(両側性視神経障害など)は、視力、色覚、視野、OCT、画像などの別の軸で読む必要があります。
眼科医としての補足
- 散瞳前に行う: 散瞳薬を点眼すると判定が難しくなるため、swinging flashlight test は散瞳前の初期評価に組み込むのが基本です。
- 手技のコツ: 患者に遠方を固視してもらい、暗めの環境で行います。光は左右で同じ距離・同じ持続時間(例: 2〜3秒程度)を意識し、光を移す時間はできるだけ短くします。暗順応の差や“当て方の癖”があると判定が揺れます。
- 迷いやすい場面: 瞳孔不同、小瞳孔、濃い虹彩、強い羞明、薬剤性散瞳/縮瞳などは読み取りを難しくします。「所見が取りにくい」こと自体を記録しておくと、後で解釈しやすくなります。
- Reverse RAPD: 片眼が散瞳固定していてその眼の直接反応が読みにくい場合でも、反対眼の縮瞳の変化を観察して求心路左右差を推定できることがあります。これはReverse RAPDとして整理されます。
- 外来の使いどころ: 視力差・色覚差・視野異常を疑うのに眼底が決め手に欠ける場面で、まず RAPD を取り、求心路障害の可能性を上げ下げします。
- 次の一手: RAPD が示唆されるときは、視機能(色覚・視野)、OCT(RNFL/GCL)、必要に応じて画像(眼窩〜頭蓋内)を組み合わせて“どこまで求心路か”を詰めます。検査の実施や算定は各施設の運用に沿って判断します。
元動画をご覧ください
この所見の見え方(“当てた瞬間に開く”のニュアンス)は、短尺でも原典を見るのが確実です。本記事は所見ポイントを再構成した解説です。
まとめ
- RAPD(Relative Afferent Pupillary Defect)は、swinging flashlight test で左右の求心路入力差をみる所見
- 検査は散瞳前に行い、左右で光の距離・時間をそろえ、移動は素早くする
- 「光を当てた瞬間にむしろ散瞳して見える側」が RAPD 側として読める
- 示唆されるのは視神経障害、または片側優位の重度網膜障害(遠心路障害そのものではない)
- 片眼の遠心路障害で直接反応が読みにくい場合は、Reverse RAPD の考え方が役に立つ
- RAPD は相対評価なので、両側対称病変では陰性になりうる(陰性=正常ではない)
- 技術依存の検査なので、距離・時間・移し方を揃えて再現性を上げる
参考文献・参考資料
- U-M Kellogg Eye Center(The Eyes Have It). Relative Afferent Pupillary Defect. YouTube. https://www.youtube.com/watch?v=WrNYqNH3b3A
- EyeWiki. Relative Afferent Pupillary Defect. https://eyewiki.aao.org/Relative_Afferent_Pupillary_Defect
- The Eyes Have It (Kellogg Eye Center). Pupils: Screening Exams. https://kellogg.umich.edu/theeyeshaveit/screen/pupils.html
免責事項
本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療的助言や施設ごとの診療方針に代わるものではありません。
実際の診療では、患者背景、緊急性、各施設の体制を踏まえて判断してください。
