動画で学ぶパリノー症候群―上方注視・瞳孔・眼瞼を順に読む

パリノー症候群の動画では、上を見ようとする眼の動き、光と近見に対する瞳孔の反応、眼瞼の位置を続けて観察できます。さらに、随意的な眼球運動と前庭動眼反射(VOR)を比べると、核上性障害という考え方が具体的になります。

目次

元動画:Parinaud’s Syndrome

Moran CORE/University of Utah:Parinaud’s Syndromeを見る

Kathleen B. Digre医師による教材で、前半のモノクロ映像と後半のカラー映像を順に見ます。以下の時刻は目安です。該当場面の前後も再生し、検者が加えた刺激と、それに対する眼の反応を対応させてください。

動画の所見を順に読む

1.水平運動と上方運動を比べる(冒頭〜1分30秒頃)

水平運動から見る → 上方注視を見る

前半では、まず側方への眼球運動と水平サッカードに注目します。続く上方への視線移動では、水平運動と比べて上転が乏しいという対比を読み取ります。目標だけでなく、瞳孔の位置と代償的な頭の動きを見ることがポイントです。

この対比は、眼球運動がすべて一様に障害されているのか、垂直方向が目立って障害されているのかを考える手掛かりになります。水平運動が保たれることを、すべての背側中脳症候群に必須の条件とはしません。

2.対光反応の後に近見反応を見る(1分30秒〜2分33秒頃)

対光反応を見る → 近見反応を見る

光を当てたときの縮瞳と、近くの目標を見たときの縮瞳を比べます。対光反応が乏しい一方、近見では縮瞳が得られる、という違いがLNDを読むポイントです。単に「瞳孔が大きい」ことをLNDと呼ぶわけではありません。

近見の場面では、瞳孔の縮小と両眼の輻輳を別々に追ってみてください。動画の明るさや撮影条件も考慮し、縮瞳の程度を画面だけから定量化しないようにします。

3.正面視の眼瞼と、刺激中の眼球運動を見る(2分35秒〜3分05秒頃)

後半の患者の眼瞼・眼球運動を見る

まず正面視で上眼瞼の位置を確認し、その後、縞模様の刺激中に眼球がどちらへ動くかを追います。Collier徴候として見るのは上眼瞼後退であり、額のしわそのものではありません。

輻輳退縮運動を見るときは、両眼の内転と眼球の後退に注目します。正面映像だけでは奥行きの変化を読み取りにくいことがあるので、内転だけを見て後退まで断定しないことも大切です。

臨床で視運動性刺激を使う場合は、患者から見える縞を下向きに動かし、上向きの急速相を誘発する方向で確認します。通常の緩徐相・急速相からなる眼振とは異なる運動です。Stanfordの教材

4.随意運動とVORを比べる(3分05秒〜3分22秒頃)

VORの場面を見る

最後は、頭部を受動的に動かした際の垂直方向の眼球運動を、それまでの随意的な運動と比べます。随意的には出にくい運動がVORで得られるという対比が、核上性の障害を考える手掛かりになります。

VORによる改善は核上性障害を支持しますが、「核・神経・筋がすべて無傷」と証明するものではありません。病変の範囲によってVORも障害され得るため、改善しないことだけで背側中脳症候群を除外しません。頸部外傷や頸椎の不安定性などを考慮して医療者が実施を判断する検査であり、患者自身が首を強く動かして確認する方法ではありません。眼球運動評価の教材

図1:元動画を見直すための観察順序です。各段階を診断の必要条件にしたり、全所見がそろうまで評価を待ったりするものではありません。VORは医療者が実施可能性を判断する検査です。

観察した所見を、背側中脳の所見群として整理する

所見動画・診察で比べること解釈の注意
上方注視障害水平・下方と上方の運動上転制限だけで局在を確定しない
対光近見解離光と近見による縮瞳散瞳だけではLNDではない
輻輳退縮運動上方注視努力に伴う内転・後退内転と奥行き方向の後退を分けて観察
Collier徴候正面視での上眼瞼の位置額のしわと同一視しない

これらの組合せが背側中脳の病変を考える手掛かりです。部分的な組合せもあり、全所見がそろわないことを除外理由にしません。VORの比較は核上性を考えるための追加情報であり、「第5の必須徴候」ではありません。Stanfordの背側中脳に関する教材

臨床への補足:原因検索と初動

以下は動画の患者の原因を決める説明ではなく、新規の所見を診察で認めた場合の考え方です。

松果体部などの腫瘍、水頭症、中脳の梗塞・出血、脱髄、炎症などが鑑別になります。若年例で腫瘍、高齢の急性例で血管障害を考えることは参考になりますが、年齢で他の原因を除外しません。シャント留置例では機能不全の可能性も確認します。

新しい所見は脳画像評価と神経内科・脳神経外科への連携が必要です。安定した患者ではMRIで中脳・松果体部・中脳水道周辺を評価します。

急性発症、強い頭痛、嘔吐、意識低下、他の急性神経症状があれば救急対応を優先します。 出血や急性水頭症などが疑われる状況では、MRIを待たずCTを含む利用可能な緊急画像評価へつなぎます。診察所見を全部取り終えるまで紹介を遅らせません。

もう一度、元動画を見る

元動画を最初から再生する

「水平と上方」「光と近見」「随意運動とVOR」の3つの比較を軸に見直してください。眼瞼の位置や反復する異常運動も合わせて見ると、個々の所見を背側中脳の所見群として整理しやすくなります。

参考文献・参考資料

元動画

  • Digre KB. Parinaud’s Syndrome. Moran CORE / University of Utah. YouTube. https://www.youtube.com/watch?v=gu8stJTdVJo

医学的な補足

  • Stanford Neuro-Ophthalmology. Internuclear & Supranuclear Lesions. 2018. https://neuro-ophthalmology.stanford.edu/2018/05/neuro-ophthalmology-questions-of-the-week-noi13-diplopia-9-3-internuclear-supranuclear-lesions/
  • Stanford Neuro-Ophthalmology. Ancillary Tests. 2017. https://neuro-ophthalmology.stanford.edu/2017/03/neuro-ophthalmology-question-of-the-week-ancillary-tests/
  • Parinaud Syndrome. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK441892/
  • Stanford Neuro-Ophthalmology. Diplopia 2 – Assessment. 2018. https://neuro-ophthalmology.stanford.edu/2018/03/noi13-diplopia-2-assessment/

本記事は医療者向けの教育資料です。個別の診断や施設の診療方針に代わるものではありません。

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